結論からいうと包茎と女性の子宮頸がん発症確率は関係しているといわれています。子宮頸がん発症の原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)は、性行為をした女性の80%が生涯で一度は感染すると言われるウイルスです。ここでは包茎とHPVウイルスの関係性や、その対処法について解説します。
割礼の習俗があるユダヤ教では、子宮頸がんを発症する女性は非常に少ないと言われています。また、近年割礼をする新生児の割合が減ってきた米国でも、包皮を切除しなかった場合、将来的にがんなど病気にかかりやすくなり、医療費が数千億円単位で増えるとの研究結果も報告されています。
これらのポイントを踏まえると、包茎と子宮頸がんとの関係性は無視できない事がわかります。ここでは、この2つがどのように関係していくのかを紹介していきます。
子宮頸がんの主な発症原因はHPVと呼ばれるヒトパピローマウイルスといわれています。子宮頸がんは20代〜30代の女性に多く、15歳〜44歳までの若い世代の中では、罹患率、死亡率とも乳がんについで2位と女性が発症するがんの中でも割合が多くなっています。出産世代・子育て世代に多く、「マザーキラー」との異名も持っています。
感染経路は、性的接触や皮膚や粘膜との接触によるもの。女性に限らず男性にも感染するため、不特定多数の異性とセックスした場合などには注意が必要です。また肛門性行や口腔性行で感染した場合は、肛門がんや咽頭がんになる場合もあります。
HPVウイルスとは、子宮頸がんなどを発症させる感染型のウイルスです。がんを発症させるウイルスと聞くと特別なウイルスにも思いますが、性交渉の経験がある女性の80%以上が生涯で一度は感染するとされるなど、誰にでも感染する可能性があるウイルスです。
多くの場合は自分の免疫などによって排除されますが、持続的に感染し続けることで、あらゆるがんに進展する原因となります。国立がん研究センターには毎年約2,700人の方が、子宮頸がんによって亡くなっているデータもあります。
HPVウイルスは性行為によって感染しますが、男性にも感染することがわかっています。皮をかぶった部分には、垢がたまりやすく、菌やウイルスの温床となりHPV感染のリスクも上がるのでは、といわれています。
この状況を踏まえて、世界でも権威のある週刊総合医学雑誌である『NEJM』では、5カ国でHPV感染や女性パートナーにおける子宮頸がんのリスクについて検証しました。その結果、包茎治療をした場合、HPV感染リスクが減少すると同時に、子宮頸がんのリスクも減少する事がわかりました。これらの理由から、包茎と子宮頸がんの発症リスクは関係ある事がわかります。
ここまでの項目では、包茎とHPVウイルス感染について紹介しました。ここからは、「じゃあどうすればいいのか」について解説します。
子宮頸がんの予防には陰茎を清潔に保つことが大切です。陰茎の亀頭や包皮の間にたまる垢は、子宮頸がんの原因であるHPVウイルスなど菌の温床となりやすくなります。そのため、自分で露茎させられる仮性包茎では、入浴時に自分で皮を剥いて、垢や汚れをよく洗い流すようにしましょう。陰茎を清潔に保つことで、HPVウイルスへの感染リスクを軽減させられます。
包茎手術をすることで、HPVウイルスの感染リスクが下がったデータもあります。包皮を剥けない包茎では、亀頭や包皮の間に垢がたまりやすく、HPVウイルスの感染リスクが上がります。包茎治療によってパートナーの子宮頸がんの発症率が軽減されたデータもあるなど、包茎治療は子宮頸がん予防に一定の効果があることがわかります。
性行為時にコンドームを一貫してつけることで、HPVウイルスへの感染リスクを下げる一定の効果があるともいわれています。2006年に『NEJM』が行った検証でも、パートナーが100%コンドームを使った場合、がんに進展するHPVウイルスの感染が検出されなかった例もあります。
子宮頸がんを完全に予防することはできないかもしれませんが、陰茎を清潔な状態に保つことでそのリスクを軽減させることはできます。実際に『NEJM』で行った検証においても、包茎手術やコンドームを使用することで一定の予防効果があることがわかります。
陰茎を清潔に保つことや、包茎を治療すること、コンドームを一貫してつけるなど対処することで、女性の子宮頸がんや、肛門がん、咽頭がん発症のリスクを減らせます。男性側がHPVウイルス感染を予防する努力をすることで、あなたの大切なパートナーを子宮頸がんから守れる可能性が上げられます。